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000ホンモノの食材は、ストライクゾーンが広い
写真:伊藤徹也
「日本にナチュラルワインを普及してきた店」「奥渋谷を活性化させた店」「並んででも行きたい店」などなど、注目を集め続けている東京・富ヶ谷のワイン酒場〈アヒルストア〉。7坪の小さな店はいつも満員だが、その混雑さえも楽しく、カウンター席と樽テーブルの立ち飲みスタイル、というカジュアルさも心地よい。
店主である齊藤輝彦さんは、飄々と客をもてなしながら、次々と料理を仕上げていく。季節の野菜やハーブを使った小皿料理や、昔ながらのフレンチ惣菜は、どれもナチュラルワインに合わせて作られたもの。ぶどうの栽培から醸造まで自然な製法でできたナチュラルワインは、野菜や果物と同じ農作物のようなもの。だから、必要以上に手をかけることなく素材の味を引き出した料理が合うのだろう。
齊藤さんの料理が、軽やかでありながら絶対的なおいしさで強い印象を残すのはきっと、敬愛する農家の“佐々木さん”の野菜の持ち味を活かした本質的な料理だから。
以前、「化学調味料を使わずに真面目にやってきたのは、愛読する『美味しんぼ』(漫画)の『良い素材さえあれば料理は決まる』という姿勢に影響されている」と話していた齊藤さんに、Table to Farmについての感想を聞いてみた。
応用が効く和えもの感覚
玉ねぎとミョウガのしらすサラダ
新玉ねぎが旬の時期に〈アヒルストア〉で提供しているサラダ。刻んで水にさらした玉ねぎにみょうがとしらすを合わせて、柑橘の果汁と好みの油で和えるだけ。食べたときに、ピスタチオのカリッとした香ばしさと甘みが、ホッとするようなアクセントになっている。
上質なベーコンは、脂がご馳走
ベーコンのキャベツ焼き
食べると口の中にベーコンの香りが広がり、ふわっとした食感の生地はあっさりといくらでも食べられそう。この軽やかさは、たっぷりのキャベツを少なめの粉でまとめているから。生地にベーコンを混ぜ込んで、弱火でじっくり焼くのがポイントだ。自然豊かな環境で、草やどんぐりを餌に放牧で育った走る豚 ベーコンが、味の決め手となっている。
最初はベーコンを敷いた上に生地を流して焼いてみたんだけど、脂が溶け出してガリガリになりすぎちゃう。せっかくおいしい走る豚 ベーコンなので、ケークサレ的に生地の中に残っているほうが脂のコクや風味を活かせると思います」
2つの材料を合わせるだけ!
にぼ酢
材料を手に入れたら5秒でできる、なんとも潔いレシピ。“にぼし+酢”から命名された料理名で、にぼしは西日本ではいりこと呼ばれることが多い。今回使ったやまくにのいりこは、上質なカタクチイワシのにぼし(いりこ)を選別し、一つ一つ手作業でエラや内臓を取り除いているから、くさみやえぐみがなく、きれいな味わい。そのにぼしを浸ける富士酢は、丹後の里山で育った無農薬のお米を一般的な商品の5倍量を用いて、自家製の米麹や山の伏流水で造った“酢もと諸味”、蔵付き菌で自然に発酵・熟成させた、濃厚な旨みが特徴。
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