植物性乳酸菌が生きて腸に届く、漬物の『素の味』1 〜微生物たちの仕事〜

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植物性乳酸菌が生きて腸に届く、漬物の『素の味』1 〜微生物たちの仕事〜

取材・文:相馬夕輝

写真:峰岡 歩未

地球上には数多と微生物が存在している。土壌や水、空気中にも存在しているし、人間の胃腸や肌の表皮にだって、それぞれの環境に合わせた微生物が存在している。それぞれの場所でそれぞれの微生物が役割を担いながら共生しているのが、この世界であり、この地球の豊かさそのものだと言える。

ありとあらゆるものに微生物が存在していることで、排泄物や有機物が土に還っていくこと、発酵して調味料や発酵食品が出来上がることなど、あらゆる生物の循環が微生物を介して行われている。発酵の言葉の定義としては、「微生物が有機物を分解して、人間にとって有益な物質を作り出す現象」とされ、その対極として腐敗の存在が定義されている。しかし、腐敗もまた、次の生命を育むために循環が生まれているひとつでもあります。この世界を自然の目線で見た場合、なにひとつ無駄はなく、有効なものしかないとも言えるのです。

「自然界における発酵」現象の中に、あらゆる生命行為が内包されている、と言っても過言ではない。微生物が生きていることが発酵そのものだと言えるでしょう。

生産者を巡りながら、『素の味』のおいしさを学べば学ぶほど、発酵の原理や、土壌の循環など、人間の目に見えない小さな微生物たちによる恩恵があってこそおいしさが生まれていくことを知ります。それはなんだか、微生物が元気に活動をしていることそのものが、おいしさをつくりだす原点であると言えます。

おいしさの素をつくるのは、微生物!?

漬物の『素の味』を知ることは、発酵と地球とそこに生きる人間の関係を知るきっかけにもなります。目で見えない小さな生物の総称=微生物の中で、発酵のプロセスに関わる、細菌、カビ、酵母などの定義を、あらためて明確にしておきながら、話を進めていこうと思う。

・微生物
目で見えない小さな生物の総称(細菌もカビも酵母も全てを含む)

・カビ、糸状菌(菌類)
真核生物(細胞に核がある菌類・多細胞・糸状に伸びる)
→麹菌、カツオブシ菌

・酵母(菌類)
真核生物(細胞に核がある菌類・単細胞)
→清酒酵母、パン酵母

・細菌(バクテリア)
原核生物(細胞に核を持たない、最も単純)
→乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、好塩菌など

ここで説明が必要なのは、実は、菌類と細菌は名前が似ているが別物であること。カビ・酵母などの菌類は、人間も同じく(!)細胞内に核がある「真核生物」。一方で、細菌は細胞内に核を持たない「原核生物」である。菌類と細菌は大きさは比較的近く、目に見えない小さな存在だけれど、実は、菌類は細菌よりも人間に近い存在なのです。いやはや、不思議ですね。

また、「酵母」と「カビ」は同じ菌類の仲間で、酵母は単細胞で出芽して増殖し、カビは多細胞で菌糸を糸状に伸ばして胞子で広がるなどの違いがあります。

それぞれの役割や代表的な仕事を以下のようにまとめてみました。

カビ(菌類)は分解の専門家。旨み、甘み、コク、風味などのおいしさを生み出していく。

カビの一種である麹菌は、日本酒、醤油、味噌など、様々な調味料を作る上で大活躍します。蒸したお米、麦、大豆などの穀類の表面に麹菌が付着すると、表面から内部へ菌糸をじっくり伸ばしていきながら、大きく3つの仕事を行っていきます。

お米についた麹菌を例に説明していきます。

1)甘み
麹菌は菌糸を伸ばして、「アミラーゼ(酵素の一種)」を送り込み、「デンプン」を「ブドウ糖(甘味)」に分解します。

2)旨み
麹菌は菌糸を伸ばして、「プロテアーゼ(酵素の一種)」を送り込んで、高分子の「タンパク質」を「アミノ酸(旨み)」に分解していきます。

3)風味やコク
麹菌は菌糸を伸ばして、「リパーゼ(酵素の一種)」を送り込んで、「脂質」を「脂肪酸」や「グリセロール(コクや風味)」に分解します。

麹菌(カビ)がもつ酵素によって、大きな高分子のデンプン、タンパク質、脂質をチョキチョキとその分子のつなぎ目を切り離しながら小さく分解していくことで、調味料などに含まれる香りや旨み、甘味やコクを生み出していってくれるのです。日本の食文化に深く関係する調味料との関係が深い麹菌は、日本の食文化の核とも言える仕事と言えるでしょう。

酵母はアルコールやガスをつくりながら、芳醇な香りを生み出していく。

酵母は、糖を食べてアルコールやガスをつくりだします。日本酒をつくる過程では、先ほどの麹菌の仕事で生まれたブドウ糖を、次に酵母がアルコールとガスに変えていきます。つまり麹菌と酵母菌はバトンタッチしながら、酒や調味料をつくっていく仕事をしています。

他にも、例えば世界最古の酒と言われるワインは、ぶどうがそもそも糖分を果実内に持っているので、麹菌は不要で、その糖をぶどうの表皮などに付着している酵母がそのまま発酵を進めてワインができあがっていきます。ぶどうそのものが持っている成分だけで、自然に発酵が進んでいく点で、非常に原始的で、世界最古の所以だと言えます。他にもガスを発生させる力を利用して、スパークリングの酒をつくることができたり、身近なところでは、イースト菌も酵母の一種で、パンがふっくら膨らむのに一役かっています。酵母は、揮発性のあるガスを生み出し、食材に豊かな香りを感じさせてくれる仕事をしてくれます。

ヨーグルトやチーズ、漬物、納豆を生み出す最も小さな生物の細菌たち

そして、カビ、酵母に次いで、最も小さな単細胞バクテリアの細菌は、地球上の自然の生態系や、あるゆる動物たちの身体の中で、分解や栄養の合成、免疫のサポートなど、多様な役割を担います。食品においては、乳酸菌や酢酸菌、納豆菌などの発酵もあれば、腐敗を生み出すこともあり、その両極の仕事を行っているのが特徴です。

乳酸菌は糖分を分解して乳酸を作り、ヨーグルトやチーズ、キムチや漬物などの製造に欠かせません。日本酒においても、酒母を作る段階で乳酸菌の力でph値を下げ、雑菌の繁殖を防ぐ効果を発揮してくれます。酢酸菌はアルコールを酢酸に変える働きがあり、日本酒を酢に、ワインをワインビネガーに変えてくれますし、納豆菌は言わずもがな、納豆を作ってくれる。日常の食品の中には、多くの細菌の力が活かされ、発酵食品となり、人間に様々な栄養を与えてくれているのです。

同時に細菌は、発酵とは対極となる腐敗も生み出します。人が食べることにおいては非常にネガティブな印象を持つ腐敗ですが、自然界から見ると、言わば土に還って、次の生命の循環を生み出す準備段階を始めてくれているポジティブな循環のひとつと見えてきます。それらは、細菌が生命行為そのものと言える代謝作用の中で行われていきます。

細菌の代謝作用は、植物や動物に比べて、非常に多様でスピーディーです。単細胞で、かつ、体積に対して表面積が大きいことから、植物や人間などの多細胞生物に比べて圧倒的な早さがあり、たった数時間程度で人間の生の何倍ものスピードで世代交代が繰り返され、菌数も爆発的に増えていきます。その圧倒的な代謝スピードによって、豊かなダイバーシティが生まれ広がりを持っていきます。

ぬか漬けや味噌、キムチなどを家で仕込む時、人の手に付着している常在菌が影響する話を聞くことはあると思います。この細菌の爆発的な代謝作用を考えれば、手についている菌や、空気中にいる菌など、たった少しの菌しか触れていないと思っているものであっても、短時間でも大きな影響力を持っていくことが想像していただける気がします。

もちろん、たとえ殺菌処理をしたとしても、細菌類の体を構成しているのは、旨みの要素ともなるアミノ酸です。多様な細菌によって、多様なアミノ酸をつくっていることにつながることは、化学調味料で化学合成された単方向の旨みでは補えない、奥深く多奏的なおいしさが生み出されます。

発酵食品では、様々な微生物たちがそれぞれに役割を持ちながら仕事を繰り返し、人間が暮らしているスピード感とは全く違った次元で、何世代もの分解と増殖の代謝を繰り返しながら、多様性溢れる世界が構築されていきます。私たちが日常の中で、おいしく食べているものの多くは、微生物たちのおかげなのです。

また、この地球の生物が日夜ゴミを生み出し、排泄を繰り返したとしても、ゴミだらけや排泄物だらけになることなく、同じ地球であり続ける事ができてきたのも、微生物たちのおかげです(しかし、現代では分解できない化学合成物も多く、そうもいかない局面にはありますが、、、)。

微生物たちの目から見た世界を知れば知るほど、ニュースに流れてくるあらゆる情報が、どれも人間のエゴに溢れた世界に思えてきます。人間が見えている世界だけではこの世界を捉えることはできないことを、食べ物を通して、学び直す必要がある時代に向かっていると思っています。

さて、漬物記事はまだまだつづきます。

日本の伝統漬物『すぐき漬け』の世界、そして、その次に韓国の伝統漬物『キムチ』の世界へ。

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昔なつかしい生たくあん(非加熱・無殺菌)(有限会社樽の味)

和歌山県御坊市で昔ながらの漬物を作る「樽の味」。「昔なつかしい生たくあん」は宮崎の契約農家が丹精込めて作った大根を手作業で天日干ししています。太陽と冬の寒風、自然の力によって、もとの重さの3分の1ほどまで乾燥させ、大根の持つ甘みや旨みをぎゅっと凝縮。沢庵らしい独特の酸味と風味を最大限に引き出すために半年以上樽の中で寝かし、熟成と植物性乳酸菌による発酵を行います。この発酵熟成によって奥行きのある旨みと心地よい酸味が引き出されます。通常は発酵を止めるために加熱処理されますが、樽出しそのままの【非加熱・無殺菌】で特別にTable to Farm仕様でご用意。漬物に含まれる植物性乳酸菌は生きたまま腸へ届く強い力を持っています。日々の食事に取り入れるだけで、腸内環境まで整う発酵食品。クセになる“すっぱさ”をぜひ味わってみてください。

¥1,188

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