植物性乳酸菌が生きて腸に届く、漬物の『素の味』2 〜無殺菌『すぐき漬け』のおいしさ。生きた乳酸菌の存在〜

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植物性乳酸菌が生きて腸に届く、漬物の『素の味』2 〜無殺菌『すぐき漬け』のおいしさ。生きた乳酸菌の存在〜

取材・文:相馬夕輝

写真:峰岡 歩未

全3回に渡ってお伝えしていく漬物の素の味記事。前回は微生物たちの働きを簡単に知っていただきました。まだまだ僕も勉強中です。ぜひ一緒に学んで行きましょう。この回では、日本の伝統食品でもある漬物を食べ比べながら、その『素の味』を探していく中で感じて来たこと、そして生産者の元を訪ねて学んできたことをお伝えしていきたいと思っています。

多様な菌そうによって生まれる個性豊かな日本の漬物

一言で漬物と言えども、種類は豊富にあります。日本各地には、それぞれの土地に、個性的で豊かな食文化が根付いています。しかし、その基本は非常にシンプルで、その土地の環境にあった作物を育て、大量に穫れる旬の時期にまとめて収穫できてしまう作物を、塩を使いながら雑菌繁殖を抑えつつ、塩の浸透圧を活用しながら、腐敗の原因ともなる不要な水分を作物の中から抜き出し、長く食べ続けていけるように保存していくことにあります。塩の力は本当に偉大です。塩については、ぜひキムチの素の味の回でまたあらためてお話しさせていただきます。

その土地に育つ在来の作物を使い、その土地にいる多様な細菌の力で発酵させ、その土地、その蔵元、その人でしかつくれない味が生み出されていく。同じ漬物であっても、家々によって味が異なるのは、栽培土壌における土壌菌のバランスも違えば、家々に棲みついている微生物層も異なってくるので、目に見える世界では同じように見えているものでも、目に見えない世界においては大きな違いがある。そして、発酵や漬物は、そんなミクロな世界が持つ、この地球の多様性をダイレクトに味わえる食べ物だと思うのです。

Table to Farmが毎週開催している試食会でも、まずは全国から代表的な漬物を取り寄せてみました。ぬか漬け、沢庵、高菜漬け、野沢菜漬け、、、誰もが知るものも多くあった中で、僕たちは偶然にも京都の漬物「すぐき漬け」と「しば漬け」に出会っていきます。そして、その豊かな酸味がもつ世界に魅了されていきました。

京都の三大漬物のひとつ、すぐき漬けとの出会い

京都・上賀茂地域の農家は、代々に渡り、京都の在来野菜「すぐき菜」の種を守りながら、継ぎ続けています。秋に収穫を終えたすぐきは、それぞれの農家が塩漬けにし、樽漬けをおこないます。樽の中にぎゅっと詰め込み重石をのせることで、すぐきから出てきた水分が樽の中を覆い、すぐき菜は塩水の中にしっかりと漬け込まれ、空気との接点が遮断されます。そんな塩水環境の中であっても、耐塩性を持ち、空気との接触を必要としない嫌気性の特性をもあわせ持つ乳酸菌たちは、他の雑菌に冒されることなく、のびのびと発酵を続けていきます。

すぐき漬けのように、地域で種が管理され、守られている作物を活用した漬物は、契約農家がそれぞれに仕込んだ漬物を、京都の主要な漬物屋が買い取り、漬物屋の店頭や百貨店、新幹線乗り場などに並んでいきます。すぐき漬けについては、基本その分業体制ができあがっていました。もちろん、上賀茂にある漬物屋は、自社で栽培から漬物加工までを一貫して製造しているところもありますが、それはほんの一握りかもしれません。漬物屋とすぐき漬け農家、その関係性をずっと守りながら商売をしてきているからこその伝統産業であり、それはとても京都らしい側面だとも言えます。そして、だからこそ守られた文化でもあったのだと思いました。

それぞれの農家の漬け床には、代々引き継がれながら、それぞれの菌そうが、家々で作られています。たった数時間でも、乳酸菌の驚くべき代謝作用によって、菌そうは大きく異なる中で、すぐき漬けが発祥した歴史に遡れば、それはもう宇宙がひっくり返るくらいの違いがあるように思えてなりません。実際に、すぐき漬けを販売している京都の漬物屋の漬物をたくさん食べ比べてみましたが、酸味や風味には、それぞれに大きな違いがありました。Table to Farmがセレクトした、「京都西陣本家こじま」のすぐき漬けは、とてものびやかな酸を感じて、身体が喜ぶようなおいしさがあったことを、今でも感覚として覚えています。

すぐき漬け・しば漬けを巡って「京都西陣本家こじま」へ

全国各地の様々な漬物の食べ比べをしながら、すぐき漬けに加えて、しば漬けもまた、共通しておいしいと感じた京都の漬物屋がありました。京都で創業115年の歴史を持つ「京都西陣本家こじま」さんです。さっそくお伺いさせていただきました。加工場に入ると漬物の香りが漂います。樽出し作業をしている最中でしたので、その中から少し味見として、樽出しのすぐき漬けをいただきました。そうしたら、驚くほどおいしいのです。試食会で食べたものでもすでにおいしいと思って伺っているのですが、何かが全く違うのです。身体中を電気が走るように、生きた乳酸菌の登場に、身体中が反応しているのが明確に認識できるのです。この感覚は一体なんだろうか、と思うほど。

聞けば、樽出しのままの漬物は、加熱処理による殺菌がなされていない、言わば、漬物そのものの本来の味でした。樽の中で、ずっと長く生き続けている乳酸菌を生きたそのままをいただいた味だったのだと知ります。同時に疑問を感じました。どうしてこんなにもおいしい、無殺菌すぐき漬けが普通に売られていないのだろう、、、と。

無殺菌の漬物をスーパーで見かけない理由

すぐき漬けは、新漬けと言われる年末から年始にかけての時期は、フレッシュな味わいが特徴です。そこから漬け込み時間が長くなり、徐々に発酵が進んで春頃になると、酸味や風味が華やかに立ち上げていきます。さらに夏を超えて、古漬けと呼ばれる時期にまでいくと、刺激的な酸味と熟成した熟れ香が生まれていきます。

それぞれに風味の違いが楽しめる良さがあり、好みの時期を知る楽しみや、変化を味わう楽しみもまた、漬物を楽しむ醍醐味と言えます。ただ、この乳酸菌たちが生きている状態で流通するのは非常に課題が多いのでした。もし、殺菌のための熱処理をしなければ、味は変化し続けます。さらに包装内にガスを発生させてしまうため、封入した真空密閉袋がパンパンに膨れ上がってしまいます。菌が生きていると、流通に向かない。それが一般市場の常識であったのです。市場に出回るほぼ全ての漬物が熱処理によって殺菌をした上で販売されています。それは決して悪いことではなく、安定した供給、安定した味の再現性を求めると、必要な手段だと思います。

生産地と消費地が離れ、旬を迎えて野菜が大量に出てしまうから保存しなければ、、、という生活は都心部にはほぼ存在しません。都心部に限らず、家庭菜園でもしていなければない、と言えます。そうなると、家で漬物を仕込むことが日常からは離れてしまうのは当然といえば当然。漬物は買う物となった現代では、生きた乳酸菌を持つ漬物の味(もちろん無添加)を知る人がほとんどいない、ということを示していると言えます。とにかく知ってほしい、食べてみて欲しいと思いました。非加熱・無殺菌の漬物こそが、本来の漬物の味、漬物の『素の味』だと思いました。樽出しのすぐき漬けはそれほどに鮮烈なおいしさがありました。

腸と脳が繋がりあい、まさに身体全体で味わうおいしさ

非加熱・無殺菌の漬物をいただいた、その時の感覚は、口に含んだ瞬間に、身体の中を電気が走り、ビビビッと震えるようなものでした。それはもしかしたら、身体が異常信号を脳に猛烈に信号を送り出したのかもしれないな、と振り返って思います。身体から非日常の何かを感じたのかもしれないと。僕もまた、熱処理をした漬物を食べる暮らしがベースにあったからかもしれません。

現在、腸内細菌が電気信号を脳に送っていることが立証され、腸内環境がうつ病や精神病など、メンタルとも深く関わっていることも伝えられています。栄養が吸収され、身体が喜んでいることや、逆に危険信号もまた腸内から脳へと信号が送られることを思えば、そのつながりは納得できるものです。漬物に含まれている、生きた乳酸菌たちの力を、口だけじゃなく、胃や腸などの消化器官の表皮粘膜にいる細菌たちを通して、身体は素直に反応したのが、僕たちが生のすぐき漬けに出会った時の感覚だったのでしょう。

つくる人、売る人、食べる人のそれぞれの理解が支える無殺菌漬物

生きた乳酸菌たちは、たとえ低温の冷蔵庫の中であっても、死ぬことはなくゆっくりと仕事を続けていきます。そのため、1日1日、その味わいは変化を続けていきます。酸味が伸びる時や落ち着く時、ピチピチと超微発泡性のガスを感じるような時、柔らかく味が馴染む時。いつも多様な変化を見せてくれます。漬け込む期間によっても、その土地の作物の出来によっても大きく変化していきます。年ごとに味が違って当然で、蔵ごとに、樽ごとに、株ごとに、味が違って当然だと言えます。生産者としては、安定した味わいを常に一定に保つことは大事な仕事かもしれませんが、味と同時に、この、のびやかな菌たちの仕事が生かされている状況を保つことも、大事に思っていく時代に変わりつつあるようにも思うのです。生きた菌たちが体に取り込まれて、身体の中に多様な菌たちが溢れている状態をつくることの大事さは、本当においしい『素の味』の無殺菌の漬物を食べてみてもらうと、気づいていく人も増えるのではと思っています。

無殺菌の漬物を流通するには、それを買う人(店や生活者も含めて)の相互の理解が求められていきます。味の変化、ガスで膨れ上がった包装袋、、、刻一刻と変化していくことをお互いに理解しあってこそ、生きた菌を味わうことができる。変化や不安定を味わうことそのものを楽しむことが大事かもしれません。そして、発酵食品の中には無限の命があり、その命を味わうことが、やはり価値そのものなのです。

Table to Farmが選んだ漬物は、全てが無殺菌

乳酸菌が生きている漬物であるということが、漬物の『素の味』のおいしさにつながる大切な要素だったことに、気づきました。当たり前と言えば当たり前。ただ、その当たり前が、経済合理性に偏って判断し過ぎていってしまうと、うまくいかないことがある。合理性も大事。それだけでなくてもいい。その良い塩梅を、微生物や地球環境はもちろん、流通者や消費者とも対話をしながら、見つけ出していきたいものです。Table to Farmの扱うすぐき漬け、しば漬け、糠漬けしたたくわんも、漬物は、どれもそれぞれの生産者の方たちと個別にご相談をして、特別に無殺菌でお渡しいただきました。生きた乳酸菌が腸まで届く、変化を味わう、本来の漬物のおいしさを、ぜひ味わってみてください。

そして、多くの微生物によって発酵が生み出され、それは、人が食べるものとしての有益性はもとより、それ以外にも、この地球全体の循環とも繋がっていくことを、次の韓国の代表的な漬物、キムチの取材を通して学んだことをお伝えしていきたいと思います。

Product

創業115年|樽出し生すぐき漬け(非加熱・無殺菌)(京都西陣本家こじま)

千枚漬け、しば漬けと並び、京都の三大漬物として呼び声高い「すぐき漬け」。原材料は「すぐき菜」と天然塩のみ。固有の“かぶ”の一種である「すぐき菜」は、京都市北区上賀茂の地で古くから農家によって種継ぎが行われ、大切に守り継がれてきました。自然の力と蔵付きの菌、職人によって促された乳酸発酵は、すぐき漬けだけの格別で爽やかな、そして驚くほど複雑で奥深い酸味を醸し出します。高い免疫パワーを持つ植物性乳酸菌「ラブレ菌」は、なんとこのすぐきから発見されました。蔵出しそのままの【非加熱・無殺菌】のすぐき漬けはTable to Farm別注品。乳酸が生きたまま届くので、毎日摂れば健康にもいいですし、フレッシュな酸味はひとくち食べればクセになるおいしさ。徐々に発酵が進んで袋が膨らんだり、酸味がまろやかになって旨味が凝縮したり、日々深まっていく「味の変化」が楽しめます。菌が生きた漬物はその味わいにやみつきになる人も続出。葉と実を細かく刻んで、しょうゆをさっとたらして一味をかければ、万能のふりかけに。チャーハンやペペロンチーノパスタ、サンドイッチの卵サンドのフィリングに加えても美味。料理のアレンジが広がります。

¥1,404

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創業115年|樽出し生しば漬け(非加熱・無殺菌)(京都西陣本家こじま)

代々、京都大原の農家が種継ぎをして守ってきた純粋な在来種の赤紫蘇と、新鮮ななすを塩だけで漬け込み、じっくりと乳酸発酵させた、創業百有余年を数える「京都西陣本家こじま」の伝統の「生しば漬け」。天然塩と新鮮な生のなすのみ使用し、野生の菌で乳酸発酵させてつくられるしば漬けは、赤紫蘇のフルーティな香りと鮮やかな色、目が覚めるようなさわやかな酸味が特徴です。しば漬けの歴史は平安時代まで遡り、京都・大原の地が発祥。盆地特有の寒暖差と清らかな名水に育まれた大原の赤紫蘇は、京都の人々に「大原の赤紫蘇を使ってこそ、真のしば漬け」とまで言わしめるほど、美しい色合いと芳醇な香りを放ちます。Table to Farm別注品の “非加熱・無殺菌”しば漬けは、生きている乳酸菌の力で日々ゆっくりと発酵が進むため、まろやかな酸味が広がり、旨味がぎゅっと凝縮されていく「味の変化」が楽しめます。そのままシンプルに味わうのはもちろん、細かく刻めば、いつもの一皿を格上げする名脇役に。チャーハンやポテトサラダ、タルタルソースなどにそっと忍ばせるだけで、さわやかな酸味が心地よいアクセントとなり、料理全体の味わいを引き締めてくれます

¥702

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